1. 「社長の定位置は社長室ではない。お客様のところである」とは
一倉氏いわく、三十数年にわたる先生のコンサルタント歴の中で、定期的に顧客を訪問している社長は極めて少ないという。口の悪い先生は社長室を熊の巣とたとえ、そんな巣から顔を出す社長に「穴熊社長」と命名している。人間、もともとが怠惰である。居心地のいいところにいたいものである。
社長にとって社は居心地いいところでしょう。何といっても社長ですから。さて、社長はどうあるべきなのでしょう。逆説的に考えると、会社を居心地の悪いところにすることを考えないといけない。快適すぎる会社の社長室。自分を脅かすものが全くいない状態。これらはよくない。快適すぎる社長室では根が生える。
2. 経営者としての社長の立場
自分に意見する人が一人もいない組織はそれ自体不完全で機能不全になりやすい。頼んでも、文句を言ってくれる人をそばに置かないといけない。現代の用語でいえば、オープンイノベーションということになろうか。社内を改善する要因は社内で見つけることができるが、社内を改革するための着想は外からやってくる。
お金と情報は外からしかやってこない。にもかかわらず、いかに頭の中がどれだけ社内のことで占拠されていることか。社長から見ると、社員は後輩であることが多い。少し前の自分といってもいい。いいも悪いもそこに関してはお見通しである。だから、いろいろ気付く。気になる。小言を言う。そこではないだろう。
3. 経営者の苦悩
社長が気にするべきところはどこか。残念なことに、社長は社員が全員バカだと思っている。思うようになってしまう。そして外部の人間が賢いと思ってしまう。特に専門家。どんな中小企業でもお付き合いの必要なある士業の先生方。弁護士、税理士、社労士、金融関係の担当者。このような人たちは賢いと思ってしまう。残念である。実際に賢いかどうかはさておき、社長にとってこれらの人たちは、程よい距離感のある人たちである。
しかも、業界も違う。よって、よく知らないものがよく見えているだけである。社長はやっぱり外に出るべきである。国に置き変えて考えてみてもやはり、外交力と、国際競争力を作るのが政治家であり国家元首の役割(首相として)。国政に目を向けても残念ながら選挙区への熱心さと、国際競争に打って出る情熱には差があるように思える。アメリカの大統領が動くと必ずお土産が必要になる。彼らは、仲良くなるために来るのではない。植民地時代の思想は根底に残っているだろう。彼らは何かを奪うために来ている。
4. 結語
日本首相の外交の評価が、アメリカの大統領とどれだけ仲良かったかで評価されていて、どれだけ「勝ったか」で評価されることは少ない。失礼。政治評論は必要ないですね。社長です。社長の眼は外向きであるべきだということですね。Open Innovationなどいう言葉は必要ありません。外に出て、新しい何かネタを拾ってきてください。というだけのことかもしれません。 了