1. 「社長の決定はすべて外部への対応であり、未来志向である」とは
社長が外部志向であることは当たり前であろうか?未来志向であることは当たり前であろうか?残念ながら、こと日本においては、中小企業から大企業に至るまで本当に残念ながら内向志向が高く、過去志向が強い。日本人の良さは実直に累積していくことにある。過去の経験を反復によって研ぎ澄ませていくことであった。
百年前から続いている会社が日本には、33,259社ある。二百年前から続いている会社は3,146社存在している。これらは、日本人の継続踏襲することの強さを物語っている。これはこれでいいことである。しかし、閉鎖的であり、改革に対して不向きである。
製造業を主とする時代においては技術の蓄積は有効なものであった。残念ながら、産業の変化とともに、それは利点ではなくなってきた。
2. 経営改革に求められる経営者の性質
これまで、ITの波が押し寄せるまではまだよかった。何らかの財産が累積で更に価値を持つ時代であったからだ。しかし、IT革命以降は、累積精進よりも変化改革による成長が勝つようになってしまった。
馬で走っていた時代に、車が開発されたのと同じだ。車ができてしまった後に、いくら馬にたちに調教をつけても車には勝てない。それまでの調教師の技術、経験、のすべてが過去のものになってしまったのだ。民族性もあるが、ここに日本の社長の性質が強く影響している。
3. 経営者養成に必要な要件
日本の社長のMBA比率はアメリカ中国に比べて著しく低い。フォーチュン500企業のCEOの約40%以上がMBAホルダー。 日本の場合大企業で国内大学院卒のMBAホルダーが1名以上在籍している割合は約17% 。中小企業:同様の条件で約2%
更に言えば、他社経験率も低い。
・中小企業社長の他社経験率:約60〜70%
・上場企業の社長他社経験率:約30〜50%
アメリカのCEOの他社経験率
・上場企業のCEO他社経験率:約70〜80%
つまり日本では会社は、自社の中で育ち、自社の中での立ち振る舞いに優れ、社内の人脈の掌握にたけることが社長の条件である。社外の誰かと比較などされたこともない。優秀かどうかは問われていない。日本の社長は優秀な人が成るのではない。自社に詳しい人が成るのである。つまり、「先輩」大いなる先輩である。
社長にまで上り詰めた理由は、社内にどれだけ精通しているか、過去の業績として何があるか、つまりすべてが、過去の社内の財産である。社長になった瞬間からそれを捨てて、さあ未来に向けたビジョンを書け、さあ外部から情報を取れ、といわれても、その経験もしていなければその学習もしていないのである。
4. 結語
昔、丁稚という制度があった。相撲には出稽古というものがあった。剣道には他流試合というのがある。守破離を完成させるための手順である。成長は守破離の意識とプロセスを持たなければ難しい。残念なことに日本は、現場、中堅、経営層、足並みそろえて死守している。いつまで守っているのだ。「破と離」がないのだ。
国際感覚のある人たちは知っている。今の日本は中国に行く手前の止まり木みたいなものであり、中国出張の時によるといい観光地でしかない。残念ながらそれが現実である。そしてそれに気づいてさえいないのである。この一倉先生の言う「外」は会社の外ということであると思うが、日本の中では会社の外も中も同じだ。見なければいけないのは、アメリカであり、中国でありインドでありブラジルであろう。そして見ないといけない未来は「AI」である。人工知能との協業をどうとらえるかを考えるしかない。 了