2000年以降のビジネス&マーケティングの3つのキーワード

U理論 マーケティング4.0 統合マーケティング

株式会社博報堂 横田 和洋

Three key words of business & marketing. After 2000.
:Theory U, Marketing4.0 and Integrated Marketing 
Kazuhiro Yokota
Hakuhodo.inc

1.1.1はじめに
U理論を紹介したい。オットー教授により発表されたセオリーである。2004年に著書で発表されている。日本に翻訳で紹介されたのは2010年。ビジネス書のレベルにかみ砕かれたのは2014年であった。私が出会ったタイミングもこのころである。この理論はユニークな誕生の仕方をしている。コンサルティング会社の反省から端に発している。それまで、問題解決、効率化するためのビジネスツール(フレーム)を多々開発し、それを多くの企業に紹介するコンサルテーションを行ってきた。ツールは普遍的なものであるはずであった。しかしその効果、結果は様々であった。それを探求することから始まったのが、U理論である。1.2概要U理論は、組織の運営論であるといえる。1990年代まで、ビジネスの方向性は(効率化)にあったといえる。それまでとかかわるリアルの世界での情報と、対象が一気に複雑化したのが90年代であるといえる。冷戦の崩壊でビジネスプレーヤーは一気に加速したのもこの時代である。つまり何とかそれまでと異なる量と質の情報を処理することに価値が置かれた。IT化によりかなりの情報の処理ができるようになり、効率化は一気に進んだ。2004年というのはそれがひと段落したころである。1.3U理論のことを宗教っぽいとか、スピリチュアルな感じがする、という人がいる。そう感じることは理解できる。U理論はまさしく、「人」に焦点をものすごく強く当てていくので、その究極が精神世界に行きつくからである。しかし、U理論が「宗教である」という考え方は正しいとは思えない。むしろ、「宗教」は精神世界の救済だけを説くものではなく、それに付随した「知恵」の集大成であることを再認識するほうが正しいと思う。1.3U理論は、「人」にフォーカスを当てています。
事の正解と、問題解決にあたり、これまでの理論の中心にあった考え方は「何(What)」でもなく、「やり方(How)」でもなく「誰(Who)」に注目している。
「誰(何者であるか、ではなくて、何者として)」として存在し得るのか。ということである。

2.次にマーケティングの最新理論を確認したい。2.12015年フィリップ・コトラー教授がマーケティング4.0を発信した。
*1.0:製品中心主義
*2.0:消費者志向
*3.0:価値主導
*4.0:自己実現
1.0で供給側による商品中心。2.0でその消費側のニーズが中心。3.0でその双方の交わる価値構造が大切。として進化してきたことは理解できる。ある意味、これで完結しているかのようにも感じられる。その次コトラーがどこに行くのか実に興味深かった。3.0との関連性が一件ないようにも思える。確かに、供給側と需要側との関係性の真価だけだとすると3.0と4.0は無関係のようにも思える。しかし一旦マズローの欲求段階説を迂回すると理解できる。2.2マズローの第一段階生理的欲求:これはマーケティング1.0に呼応する。「物性」により満たされる階層。第二段階の安全欲求。マーケティング2.0と呼応する。これは、供給側の欲求ではなく、需要側の要求が満たされることを意味する。第3の欲求、社会的欲求と、尊厳の欲求の階層が、マーケティング3.0と呼応すると考えられる。共有側と、需要側の関係性の中で満たされる要求だからだ。そして、最後の5段階目の欲求がマーケティング4.0と自己実現で相関する。これ自体かなり精神性に寄り添っていることを感じさせる。

3.3.13つ目に、ドン・シュルツ教授の「統合マーケティング」を紹介します。IMC(統合マーケティングコミュニケーション)という概念を最初に提唱した教授として知られています。
 94年にドン・シュルツ教授の書いた「広告革命米国に吹き荒れるIMC旋風」という本が日本で発刊され、「マス広告だけではなくて、それ以外のコミュニケーション手段もトータルで管理してやりなさい」という主張。これまでも、マーケティングは、マーケティングミックスに基づいて、各部門部署の統合を行うべきという発想はあった。しかし、ドン・シュルツの統合の意識はその限りに収まらず、統合の階層をさらに昇華して考えている。企業態の組織変遷をひも解くと、(第1期)創世記:個人による全工程管理。(第2期)産業革命期:分業による効率化(作業細分化、専門家)ある意味企業の各部門の形成と分離が発生。2次産業主導の時期。(第3期)第3次産業が主導の時期。効率化のためにかつては分離していた各部門を顧客満足のための意識のもと再統合する。(第4期)各部門部署の統合のみならず、経営階層とマーケティング階層も統合して行くべき。(第5期)社内外のステークホルダーも統合されたマーケティング。
この(1期)~(5期)の整理は私がシュルツの主張を拡大整理したものである。本人が明言しているのは、マーケティングの各アウトプットの方法の統合性の必要と(第5期)のステークホルダーを統合するべきだという主張である。そしてその(第5期)の象徴的な企業、アクティビティはネスレのアンバサダー戦略であるという。消費者と販売者が統合されてしまった。本来、対境関係にある販売側と、顧客側が統合された状態としている。

4.ここまでの紹介理論。1)U理論 2)コトラーマーケティング4.0  3)統合マーケティング の3つを紹介してきた。この3つの理論の共通点は、昇華し、深化発展するほど、精神性を帯びてきているということである。しかし、その多くのものが、実は、我々の身の回りですでに一度は思考されたものである。マーケティング4.0は近江商人の三方みなよし、売り手よし、買い手よし、世間よし。である。しかし、この近代化し、複雑化し、活動の自由を制限された中で、一足飛びに「三方みなよし」に飛び込むことは困難である。

5.終わりに。もちろんこの3つの理論はそれぞれ別個に発信されたものである。しかし私はこの3つにはある関係性があるように感じる。今の時代の企業活動のあるべき方針を言い当てたのがコトラー。その、自己実現のマーケティングを実践するために必要なことは、ドン・シュルツの統合マーケティングによるファンクションの融合。そして、その融合態を作るためのプロセスマネージメントが、U理論なのではないであろうか。2000年以降の時代の中でこの3つが発信されたことは偶然ではないはずだ。我々は、近代化されたこの3つの理論を駆使し、古の人の知恵「三方みなよし」を手に入れるべく邁進したい。本稿は、3つの理論と、その相関に関する私の仮説の発表というところでいったん終息する。今後、この相関性をさらに精緻化し、コンパクトなフローに集約し、何処かの企業態とおともに実施、実行、検証する場などを求めていきたいと思う。

参考文献
・2005年ドン・シュルツの統合マーケティング 「ドン・シュルツ」
・2014年人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門 単行本「中土井 僚」

http://blog.goo.ne.jp/tomitomi111/e/0bbd3afe96ac2b16d71c45aacf4ef07d
(コトラー教授のインタビュー)

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