『一倉定の経営心得』を読む その20 経営者の先見性

1. 「社長は年単位でものを考える人である。年単位で何年も先を考えるのである。つい単位でものを考えたら、何年も先のことなど考えられるものではない」とは

 ものを考えたら、何年も先のことなど考えられるものではない」とは
マネジメントと時間のかかわりに関しての考察をしてみよう。兼ねてから私はビジネスに対して最も的確な評価軸は時間ではないかと思っている。よく、時間は全員に平等な資産だという。それを否定はしないが、もう少し違う観点でとらえている。
 本来、企業は利潤追求の機関、つまりはお金こそが評価軸であるはずである。しかしお金は成果として見るのはもちろんありだが、評価として見るのは危険な面がある。「運」に左右されやすいのである。結果しか見ない!という経営者もいるが、そのような経営者にはもっといろいろ見てくださいと言いたい。時間には偶然性がない。しかし、別の意味でつかみにくくもある。

2. 時間単位という考え方

 時間にはさまざまな効果がある。時間は化けるのである。時間はお金を増やす。金利という考え方。お金に化ける。そのほか、時間は労働力の指標でもある。時間単価という。様々な側面と展開がある。今回はキャパシティとしての時間軸を考えたい。役職や能力は責任を持つべき時間軸でも決まるという考え方を推奨したい。新入社員は、「おはようございます。本日は何をすればいいでしょうか?書類のファイリングですね。了解であります。定時までに終わらせて定時には帰ります」など、まず1日を管理することから業務をはじめることになる。これが一番下のエントリーといえる。
 それでは、社長は何年先までの責任を持つのか。基本的には4年が妥当ではないか。これは多くの会社が人事回流を4年前後で査定することを意味するが、これは中期経営計画が4年か5年で回していることに起因している。これが面白いことに、中期経営計画と社長の任期とは少しずれる。まあ、それ以前も官房長官のような位置にいたのであろうが、これは本当のところあまり望ましいものではない。なぜかというと、計画は、逆算で作るものだからである。

3. 経営層の時間管理

 どの山のどの頂上を目指すのかが計画の最大のトピックである。しかし、多くの社長はリリーフで登板し、クローザーか敗戦処理のリリーフにボールを渡す。会社に中期経営計画以上に永い時間軸がない。たまに長期ビジョンとか100年計画などというものが発表されるが、読み物であって誰とも契約しているものではない。もちろん達成できなかったときに責任とれるものもない。新人は1日、社長は4年の時間軸の獲得を目指して成長するべきだ。もしも肩書があるのにもかかわらず、毎週のことしか頭にないようであるのであれば、すぐにまずは1年を支配できる人材であってほしい。

4. 結語

 外部からの社長はこの時間軸とのずれがないことが望ましい。外部招聘社長の成功も失敗もあるが、この点において責任領域が明快なのである。先代の意思を継いで…。継ぐ必要はないのに。経営計画はステークホルダーとの契約書なので社長といえども勝手に書き換えられない。これが日本の経営を腑抜けにしている一つの要因だ。中期経営計画は、社長の交代と同時に書き換えるべきである。とはいえ、昨今のトランプバイデンほどの舵きりもつらい気はするが。 了

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