1. 「馬車で長旅をする時、目的地に予定通りにつくためには、『なぜ遅れたか』を考えても意味はない。遅れをどう取り戻すか、だけを考えればいい」とは
一倉先生の意図することは2つある。
- 犯人探しをしても意味がない。
- 何よりも次の一手が必要だ。
ということを指摘している。日本の会社は属人的な会社といえる。つまり、不具合と人間が紐付けやすい。どこの何という部署の成績が悪い、などの諸事情がすぐに分かってしまう。しかし、それが分かったところで業績は好転しない。次の一手を打ちもせず、何時までも議論を繰り広げていては何の意味もないということである。
2. マネジメントの見識
とはいえ、現代のこうした環境でいきなり行動に移すには無理があるのではないか。まず、各業務業態の専門性が多岐にわたっている。マネジメントとの最低一往復の見識の調整が必要である。雇用形態がかつてほど単純でない。社内の人間たちだけで構成されていない。しっかり考えて指示を出さないと、外部への費用が発生してしまう。
これらの点から、どう取り戻すかを考えながら実行に移す自由度が実は時代とともに変化している。さらに、その原因が海外に起因することもある。その際、代わりの打つ手など簡単には見つからない。ベターな話は再発防止しかないのである。やはり、この手の話もそうであるが、「遅れたときは、すでに手遅れ」なのである。
3. 「想像力」を最大限に活かす工夫
今日のような複雑系の時代に、事件の発生するタイミングで新たに舵を切るなどということは事実上不可能となっている。競合環境の複雑化や顧客の要求が多重化、さらにはサプライチェーンもかなり複雑化している。「有事」にとれる手立ては限られている。どう取り戻すかを考え始めたとしても、それが分かったときには年度が終わるようなことになる。対策は一つしか存在しない。
人間の最大の武器「想像力」を最大限に生かした予定を立てることだ。どのよう事件、リスクが起きるか、可能な限り想像するのだ。そしてそれが起きた時にはどうするべきか迄を用意する。オプションを持つということだ。ネアンデルタールが、アウストラルピテクスに勝てたのは「想像力」があったからだといわれている。そのためには、想像力を高めなければいけない。
4. 結語
陰腹を切る。この言葉の解釈も多々あるが、「一度切腹したつもりで考えてみろ。そうすれば、また違う道が見えてくる。死にたくないと思ううえでの考えと、死んだものだと考えた時の正解は違う」という解釈を私は支持する。
備えあれば患いなし。あまりのも単純な結論で申し訳ない。時間を有効に使うことを昔は、無駄な時間を作らないことであったが、今は違う。同じ時間に複数のことを走らせ、その中で有効なものだけがゴールにたどり着くようにしてやり直しをしないことが重要といえる。 了