1. 「いつ、いかなる場合も、自らの商品は、自らの手でうらなければならない」とは
1990年までの時代に「バリューチェーン」という言葉はどこまで普及していたであろうか。各企業の部署部門のすべての部門が各会社のコアコンピタンスを維持するために統合的に機能しなければならない。
例えば、CHANELは高級というコアの価値がある。そうであれば、材料の仕入部門は高級な資材を仕入れなければいけないし、製造部門は高級に作らなければいけない。また、搬送も高級品として扱わなければいけないし、高級品として広告をしなければならない。そして、何より高級品として販売しなければならないのである。
2. 機能の効率化と外部委託
そのすべての部門が高級に対して高い意識を持たなければならない。会社はときにその自社の機能を効率化のために自社内から切り出すことがある。搬送するときに運送会社に頼まないことの方が稀である。製品の開発もある部分は外部に委託することもある。
もはや外部の力を借りない部門はないようにさえ思う。メーカーが工場を持たずにいる時代である。それでは、効率を優先してすべての機能を社外に委託するのは正しいことなのであろうか。
3. 顧客第一主義
そこで一倉先生は、販売は自らの手で販売しなければならないといっている。時代や規模、環境により慎重に判断しなければならないことはあるが、この考え方は一倉先生の「顧客第一主義」に基づく。自分で売りもしないで、顧客の気持ちがわかるはずがないというのである。近代化が進み、大型化が進むと、会社レベルでの分業が起こる。メーカーは作ることだけに専念しようとする。特にメーカーにその傾向が強い。しかし作ったものをいつまでも倉庫に眠らせておくわけにはいかないはずである。
それに対しては見て見ぬふりをすることは多い。まだ、商社に委託しているときなどはいいのだが、自社の判断で販売会社を設立して販売を販社に任せるケースがある。販売、つまり最終顧客との接点を販社に任せきりにすると、顧客のニーズがもはや分からなくなる。販社からの要望で物を作るようになる。販社の要望は顧客の欲求からは必ず少し乖離する。収益の構造を考えてみればすぐ理解できよう。
4. 結語
最終顧客が上質なものを望んでもそこで原価が膨らむのであれば、安い材料で製品を作ることをメーカーにオーダーするであろう。効率論に基づいて販社を作ることが悪いわけではない。顧客の声エンドユーザーの声がきちんと届くことができるかどうか。
過去にあるトイレテリーのメーカーさんとお付き合いしたが、大きな会社なので当然販売会社を持っていた。しかし、エンドユーザーに対する調査は自社で行っていた。しかも相当数である。 了