1. 「お客様を忘れた自己本位の考え方を『天動説』という。この天動説がとことん販売を阻害する」とは
お客様のことをどうして忘れるのか。いろいろ原因はあると思うが、そもそものベクトルの違いがあるからであろう。ここでいうお客様は、最終的な消費者、エンドユーザーのことである。流通までのことは自分たちの領域である。
「ビジネス上発生する取引の構造がもたらすもの」これをわかりやすく言うと、メーカーが直接取引するのが流通なのである。最終消費者は一般人。この構造の場合、メーカーは顧客(最終消費者)からの信頼よりも直接の利害関係者の流通の支配下にはいることがある。これも自分本位の一つの形である。
2. 技術の進化と顧客満足度
かつて著者は広告ビジネスマンであった。その際、メーカーが顧客であるケースが多かったが、主たる広告出稿目的は「流通対応」であった。流通の棚を確保するには、広告の出稿が条件となり、その広告表現の中身においてまで流通の意向が優先された。そこに最終消費者の想いはない。全くないわけでないにしても、ほかの力学が優先される。
もう一つは、自社の仕事の意識が自社内で完結していることがある。メーカーがモノづくりのみに意識を集中させてしまう。先生業や技術職(サロン)などの人たちは、提供する「財」や「サービス」の質の向上に余念がない。しかし、それは、技術の進化であり、顧客満足度の向上とはかけ離れている。
3. 企業間競争とは何か
代表的な電子工業消費財であるテレビを購入した際の取扱説明書は、一体誰のために書かれているのだろうか。テレビは必ず毎年○○年度モデルを発表する。その際、必ず目新しい機能を求められるのである。その分値上げが可能になり、流通もそれを求める。しかし思い返してほしい。ほんの10年ぐらい前に各社がこぞって発売したのが、3Dテレビである。果たして本当に必要であったのか。
確かに飛び出すことは面白いかもしれない。しかし朝のニュース見るのに必要なはずもなく、中高年の人にとってテレビはただただつけておくものとして利用したりする。いちいちワイドショーが飛び出す必要はないのである。競争のためにやっていたのであろうが、各社一斉に地盤沈下を起こした。日本のメーカーはこぞって韓国や中国のメーカーに抜かれた。
4. 結語
現在家電に元気がいいカテゴリーがいくつかある。アイリスオオヤマは元気がいい。開発のコンセプトは引き算である。顧客の必要とするギリギリのところを残して余計な機能を排除して価格を落とす。それができる一つの理由は、流通の顔色を窺わなくていいことである。ダイレクトに顧客の要望に答えにいけるのである。 了